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イギリスの伝統的な音楽

イギリスのダンス音楽の伝統は、紳士階級のカントリーダンス、村の聖歌隊、各地に残るモリスダンス、ノーザンバランド地方の音楽、ブロッドサイドバラッド、サーカスの音楽など、時代や地域によりさまざまな種類があるのが特徴です。18世紀に始まった産業革命により、イギリスではどこの国よりも急速に工業化と都市化が進みました。田舎から若者が流出したことにより、村のダンスの伝統はアイルランドやスコットランドよりも早くに衰退しました。けれども、サセックス州やノーフォーク州、デボン州などでは、1970年代の終わり頃まで、パブやホールで演奏が行われていましたし、ホーンパイプのステップダンスも見られました。モリスダンスとノーザンバランドの音楽は、17世紀後半から今日まで途切れることなく伝承されています。

曲の種類は、古い時代からある3/2拍子のホーンパイプ、他に6/8拍子のジグ、9/8拍子のジグ、カットタイム(2/2拍子)のホーンパイプとリールがあります。大都市ロンドンを抱えるイギリスには、さまざまな国の音楽文化が入ってきます。19世紀以降はアコーディオンを伴って、大陸からカドリール、ワルツ、ショティッシュ、スウェーデンのガンメルダンス、オールドタイムダンスなどが入ってきました。

かつて、ブリテン諸島全体には活発なフィドルの文化があり、それはいわば伝統的な地域のパッチワークのようなもので、共通の要素である歌や曲が絶えず循環しながらそれぞれ発展してきました。したがって、イギリスの音楽は、アイルランド、スコットランド、それに数は少ないですがウェールズの曲が混在しています。例えば、アイルランドのオキャロランの曲と考えられている「The Princess Royal」は、1796年ロンドンでオペラに使われた後、モリスダンスに取り入れられました。また、スコティッシュリールの「Devil Among The Tailors」という曲も、あちこちの村の手書き譜や出版された曲集の中に見つけることができます。

イギリスには、17世紀頃の古い曲集や、18世紀後半から19世紀初めのフィドル音楽が最も盛んだった頃の曲集も数多く残されており、それらはフォークリバイバルの1970年代に再刊され、かつてイギリスの伝統音楽が大変豊かであったことを示しました。

20世紀初め、セシル・シャープ(1859-1924)はモリスダンスの伴奏をする古老のフィドラーたちの記録を行いました。彼は1911年、イングリッシュ民族舞踊民謡協会(EFDSS)を結成し、イギリスの民族音楽の研究を牽引しました。ロンドンのカムデンにあるセシル・シャープ・ハウスには、蒐集家たちのコレクションや資料が保管されています。

イギリスは、アイルランドのマイケル・コールマンやスコットランドのジェームズ・スコット・スキナーのような偉大なフィドルマスターを輩出しませんでした。けれども、イギリスの老フィドラーたちの録音は、アイリッシュともスコティッシュとも60年代のフォークロックとも違うものを目指す、デイヴ・スウォブリックのような70年代フォークリバイバルの若い世代のインスピレーションの源となりました。

団体紹介

イングリッシュ民族舞踊民謡協会(EFDSS:English Folk Dance and Song Society)
現在は、イギリスを中心に、アイルランド、ヨーロッパの伝統的な歌やさまざまな種類のダンス、コーラス、音楽を学ぶことができ、交流会、セッション、コンサートなども行われています。