プロフィール
大阪市出身。奈良市在住。5歳よりヴァイオリンを始める。クラシックヴァイオリンを李善銘氏、古武滋野氏に師事。大阪府立北野高校卒、島根大学理学部卒。
2002年、夫の企業留学に伴い渡英、ロンドン在住中にフィドルに出会う。イギリスの無形伝統芸術の殿堂である、イングリッシュ民俗舞踊民謡協会EFDSS (English Folk Dance and Song Society) のLondon Fiddle School を経て、Pete Cooper氏にメインに師事。
他にも、アイルランド、スコットランドのエディンバラ、ウイットニー、ニューキャッスル、オックスフォードで行われた講習会に参加。以下の数多くのフィドラーの教えを受ける。
「ラウー」のエイダン・オルーク(Aidan O’Rouke)、クリス・スタウト(Chris Stout)、ジェリー・ホーランド(Jerry Holland)、カトリオナ・マクドナルド(Catriona Macdonald)、「アルタン」のマーレイド・二・ムイニー(Mairéad Ní Mhaonaigh)、「ブレイジングフィドルス」のブルース・マクレガー(Bruce MacGregor)、クレア・マックローリン(Claire MacLoughin)、マヌス・マクガイヤー(Manus McGuire)、「ロンドンラッシーズ」のカレン・ライアン(Karen Ryan)、テリーザ・バーク(Teresa Burke)、イアン・フレイザー(Iain Fraser)、Jack Evans(ジャック・エバンズ)、ジョン・カーティ(John Carty)、クリス・ハイ(Chris High)、ジャミー・ラヴェル(Jamie Lavel)、デイヴィッド・グリーンベルグ(David Greenberg)、スチュアート・ハーディ(Stewart Hardy)、ジョラン・プレムバーグ(Goran Premberg)、ゴラン・プレムバーグ(Goran Premberg)、ジル・レドモンド(Gill Redmond)、タニア・サイモン(Tania Simon)、ジャック・ティルデスリー(Jack Tyldesley) 順不同・敬称略
レパートリーはアイリッシュをはじめ、イングリッシュ、スコティッシュ、スカンジナビアン、ケイジャン、アメリカンオールドタイム、東欧など幅広い。
2004年秋、帰国。音楽活動を開始。JEUGIAカルチャーセンターにて「アイリッシュフィドル」講座を担当。フィドルをトータルにプロデュースする Tokyo Fiddle Club を設立。その活動の様子が、弦楽器雑誌『サラサーテ』2008年vol.23、アイルランドの雑誌「CARN(カーン)」no.148に取り上げられた。
フィドルレッスンのほか、コンサートやセッションなどの音楽イベントを数多く企画をする。2008年、2010年の二度Pete Cooper氏を招聘した。2008年、2010年、再度、渡愛や渡英をして研鑽を積む。アイルランド音楽家協会CCÉ主催 Féile Tokyo Online 2020フィドルソロ部門金賞受賞。
現在、近鉄文化サロン奈良で「アイリッシュフィドル入門」講座を担当。2023年からフィドルクラブ大阪開講。
訳書に『フィドルが弾きたい!』音楽之友社刊 2022年がある。
ごあいさつ
私が初めてフィドルに出会ったときは衝撃的でした。美しい素朴なメロディを奏でているヴァイオリンが、私がずっと習ってきたクラシックヴァイオリンとは違うものであることはすぐに分かりました。呼び名もフィドル! 聞き慣れない言葉でしたが、気取らない親しみを感じました。
伝統的なフィドル音楽に、虜になるのに時間はかかりませんでした。それと同時に、私自身、20年以上ヴァイオリンを続けてきて、なぜ、このような「もうひとつの」ヴァイオリンの世界があることを、今まで知らなかったのか、逆に不思議に思いました。
日本であまり知られていないのなら、ぜひ、紹介したいと思いました。幸い、メインでついた先生が、フィドルを体系的に学べる教則本をすでに出しており、それを翻訳して世に送り出すことを、ひとつの目標にし、コロナ禍の2020年に実現しました。
これからも、レッスンやさまざまなイベントを通じて、民俗伝統のフィドルの楽しさ、面白さ、奥深さを伝えていきたいと思います。
気軽なヴァイオリンとしてのフィドルを、生涯にわたって共に楽しんでいきましょう
Tamiko
『Carn』ゲール語連盟発行誌 No.148 2010 冬号掲載
Tokyo Fiddle Club
2005年に Tamiko によって設立
(記者が)数月前に東京のアイリッシュパブ、ラウンドストーンを訪れたところ、若者から年配まで日本人フィドラーたちの非常に大きなグループが行っているアイリッシュミュージックセッションに遭遇した。そこでは女性数名がアイリッシュダンスも踊った(訳者註:長女がステップダンスを披露した)。後で彼らと話したところ、アイリッシュ、スコティッシュ、スウェディッシュ、イングリッシュ他のフィドル音楽を演奏する Tokyo Fiddle Club というグループで、これが毎年恒例のパブセッションであるということだった。Tokyo Fiddle Club の誕生とそれがどのように発展してきたかをお伝えする。
Tamiko は5歳の時、バロック音楽の若きビオラ奏者だった李善銘氏 Li Shanming の指導の下、ヴァイオリンを始めた。音楽大学への道を選ばず国立大学の理系に進学しても、アマチュアオーケストラのメンバーとしてヴァイオリンを続けていた。
2002年にロンドンのインペリアルカレッジで PhD.(博士号)を取得するために2年間の研究を始める夫に伴って、Tamikoは子供たちとイギリスに移り住む。日本を出立する直前に、彼女はどういうわけか漠然とした衝動を感じ、手荷物のリストにヴァイオリンを加えた。
ロンドンに引っ越しして音楽の好機はすぐにやって来た。彼女は、成人教育(訳者註:イギリスの国民向けの生涯教育プログラム)のガイドブックのなかに「フィドル」という文字を見つけた。彼女はその言葉を聞いたことがなかったが、それがヴァイオリンと同じもので、なじみあるクラシックのメソッドとは全く違うものだということが分かった。
Tamiko は教師を探し、ロンドンのカムデンタウンにあるセシル・シャープハウスで「ロンドンフィドルスクール」を運営する経験豊富なフィドル奏者のピート・クーパー氏を探し出した。彼女の熱意は高まり、グループレッスンと個人レッスンを並行して受講し、ロンドンでの限られた時間の中で、できるだけ多くの曲とテクニックを吸収しようとした。
彼女は、ロンドン、エディンバラ、ウイットニー(オックスフォードシャー)、ニューキャッスルで開催されたフィドルのワークショップに参加した。彼女はまた、アイルランド、スコットランド、シェットランド、イングランド、ウエールズ、カナダ、スウェーデン、アメリカ、東欧など、さまざまな国や地域のプレイヤーからさまざまなフィドルスタイルを直接学んだ。
日本は20世紀以降、多くの優れたクラシックヴァイオリニストを輩出してきたが、西洋の伝統的なフィドル音楽については、日本に紹介されたのはつい最近になってからである。最も成功したアイルランドのバンドのひとつである「チーフタンズ」は1991年、「アルタン」は1997年、「リバーダンス」は1999年に初めて日本をツアーした。
Tamiko は、アイルランドの伝統的なフィドル音楽を日本の人々に紹介し、生涯教育(lifelong education)としてフィドル演奏を楽しんでもらいたいと考えるようになった。彼女はまた、フィドルの曲は、クラシックヴァイオリンよりも簡単に演奏できるため、多くの日本のヴァイオリン愛好者たちを喜ばせることを知っていた。
帰国後、Tamiko は、Tokyo Fiddle Club(以後 TFC )を組織し、東京とその近郊でグループや個人に伝統的なフィドルを教え始めた。学ぶ人は、学生や若い人、年配の人まで、まったくの初心者から経験豊富なプレイヤーまでさまざまである。Tamiko は、大人の初心者を教える独自の方法を開発した。TFCでは、12月にフィドルパーティー、8月にパブセッションの年2回のフィドルイベントを開催している。TFC のメンバーはまた、お祭りや町内コンサートなど、日本のさまざまな公の場で伝統的なフィドル音楽の演奏の機会を見つけている。
Tamiko は、2008年と2010年に、ピート・クーパーを日本に招待し、東京、大阪、小諸(長野県)でフィドルのワークショップやコンサートを企画した。ピート・クーパーは作家でもあり、さまざまなフィドルスタイル関する書籍をすでに多数出版している。メル・ベイ出版の『Complete Irish Fiddle Player』は、世界で最も人気のある彼の教則本であり、Tamiko は、これを日本初のアイリッシュフィドルブックとして出版するつもりでいる。(訳者註:2022年に『フィドルが弾きたい!アイリッシュフィドルを完全制覇する80曲』音楽之友社刊として実現)TFC は日本のヴァイオリンアマチュアに素晴らしいフィドルの世界を提供し続けている。 (TK/COL記者)